「おかえり、柚。」
車に乗り込むと、いつものように微笑む暁くん。
「あれ?今日は髪型が違うね。」
あ、気付いてくれた…。
優輝ちゃんたちも朝には気付いてくれたけど、今日は珍しく前髪を分けていた。
昔に買ったまま一度も付けたことのない、可愛いヘアピン。
「可愛いね。よく似合ってる」
まるで、自分に言われたみたいでドキッとした。
落ち着け、落ち着けあたし。
可愛いのはあたしじゃなくてヘアピンなんだから。
震える手で、“ありがとう”と綴る。
“あたしも、このヘアピン気に入ってて…。”
「そう、よく見せて。」
えっ…
ハッと身構えた時にはすでに、暁くんの綺麗な手はあたしの左頬にあって。
くいっと、緩やかな動作で真っ直ぐ暁くんと見つめ合わされる。
う、わわわわ…っ
カーっていう効果音が聞こえてきそうなくらい、顔が熱い。
だ、だだって、暁くんの顔が近…っ
「ヘアピンも可愛いけど、前髪分けてる柚も可愛いよ。」
甘く囁くように、綺麗な笑顔で言われてしまっては身が持たない。
さっきの比じゃないくらい、顔が熱い。心拍数がものすごい早い
「…―――っ」
「真っ赤だ。」
…う、わ。暁くん、ずるい。
あたしがドキドキしてるの、わかっててやってる。
暁くん、本当にあたしが好きなのかな…。
なんか、あたしばかりドキドキして、意識して。
暁くんはいつもと全然変わらないのに。

