【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐






「(可愛らしいレディだね。ひょっとして、アキラの恋人?)」





意味がわからずしどろもどろしていると、彼の長い指がくいっとあたしの顎をすくった。





予想外のことに驚いて身をひこうとした時、突然後ろに手を引っ張られてバランスを崩した。



そのまま少し下がって、背中に誰かの体を感じる。





「(何の用だ、エドガー。)」




英語だったけど、それは確かに暁くんの声で。




背中の人と、あたしを外人から引き離してくれたのも暁くんだとわかる。





「(やぁ、久しぶりだね、アキラ。何の用だとはお言葉じゃないか。)」





外人はケラケラと笑い、もう一度あたしに視線を向けて言う。






「(可愛い子だね。もらっていい?)」




「(ダメに決まってるだろ!)」




「(そんなに怒るなよ。ジョークだろ?)」





暁くんがあんなに怒っているとこは初めて見た。




何を言われたのかは、残念ながらわからないけど。





「(…エド!?なんでここに!!)」




沙夜ちゃんの声に振り向くと、沙夜ちゃんは青い顔をしてそこに立っていた。






「(決まってるだろう?サヨを迎えに来た。帰るよ、サヨ。)」





カツカツ、と革靴の音を響かせて沙夜ちゃんに近づくエドガーさん。





「(いや!絶対いや!あたし帰らないからっ)」




「(またそんなわがままを言って、いけない子だ。僕がキースに怒られるだろう?)」




「(いやっ!エドなんかっキースに怒られちゃえばいいんだっ!)」




「(仕方ない。…ギルバート、手筈通りに。)」