「そうだ、ユズにいいコトおしえマス。」
紅茶を飲み干した沙夜ちゃんは、ふふっと可愛らしく笑うとあたしの耳元に唇を寄せる。
「来週のThursday、アキラのbirthdayデス。」
来週の木曜日って、暁くんの誕生日なの!?
沙夜ちゃんの簡単な英単語なら、ほとんどわかるようにもなっていたあたしは、瞬時に沙夜ちゃんの言葉を理解した。
「やっぱりしらなかったデスカ。アキラは、ゼッタイいわない、おもいマシタ。」
いわってあげてクダサイ、沙夜ちゃんはそう言ってふわりと微笑んだ。
…そんなときだった。
ガチャリ、とお店のドアが開く音がしてあたしは顔を向けた。
もしかして、優兄と愁生さんが来たのかも!
そんな期待をして入り口に駆け足で向かうと、そこにいたのは全然違う人物だった。
「(おや、失礼。邪魔するよ。)」
速い英語で何かを言われ、あたしは固まった。
わからない言葉を言われた日本人なら、みんな一様に同じ反応をするだろう。
ましてや入ってきたその人は、見たことのない欧米人だったからだ。
綺麗な金髪に、高い背、長い手足、青い瞳。
おまけに、外人らしく高い鼻に端正な顔。
少し緩めたネクタイにスーツという出で立ちのその外人は、ふわりと優しく笑った。
その雰囲気にどこか見覚えがあるなと頭の隅で考えていたあたしに、外人はさらに流暢な英語で言葉を向ける。

