ふぅ、と小さく息を吐いてから暁くんは丁寧に言葉を紡いだ。
「沙夜のことだよ。昨日、沙夜をまるで恋人のように仕立てたこと。」
やっぱりあれ、わざとだったんだ…。
沙夜ちゃんはあり得ないと笑い飛ばしていたけど、あたしたちには本当に恋人のように見えた。
今思えば、暁くんのあの優しげな表情は妹に対するものだったんだろうけど。
「その沙夜を、どうしてそんな風に仕立てたか、わかる?」
しばらく考えて、でもやっぱりわからなくて正直に首を振ると暁くんは自嘲気味に薄く笑った。
「白状するとね、君にヤキモチ妬かせたかったんだ。」
ヤキモチ…?それって…
あり得ないと思いつつも、もしかしてと期待してしまう。
真っ直ぐあたしを見つめる、暁くんのブラウンの瞳から目が離せない。
ドクンドクンと、まるで全身が心臓になったかのようだった。
「…好きだからだよ、君が。」
…う、そ………
真っ直ぐあたしに向けられたその言葉には、嘘やからかいなんてこれっぽっちも感じられない。
けどあたしは、ひょっとしたらこれは夢なんじゃないかという可能性が捨てきれなかった。
だってこんなにかっこよくて完璧な人があたしなんて、って。
信じられなかった。
「…ごめん、困らせた?」
そんなわけない。
ただ、嬉しくて、信じられない。

