【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐






噴水のそばにくると、そばにあるベンチで待つように言われて、大人しく待つ。






「おまたせ。はい。」





ものの数分で戻ってきた暁くんの手には、缶ジュースがあって。




ちょうど喉が乾いていたあたしは、有り難くそれを受け取った。




暁くんもあたしの隣に腰を下ろして、自分用らしい缶コーヒーを飲んでいる。





そんな暁くんをちらりと横目で見ながら、ここに連れてこられた理由を思い出していた。





話って、なんなんだろう。




こんなとこに連れてくるくらいだから、よほど重要な話に違いないということはなんとなくわかる。





でも、店を出てから暁くんは一向に切り出そうとしない。





いつもと変わらない、余裕の表情で隣にいる。





…全く考えが読めない。





あたしたちの周囲には、色んな人がいてそれぞれの時間を楽しんでいる。




犬の散歩をしている人もいて、可愛いなぁなんてどうでもいいことまで考えていた時、ついに暁くんは口を割った。





「ごめんね、突然こんな所に。」




素直に首を振ると、暁くんは小さく笑った。




「話っていうのはね、君に言わなきゃいけないことがあって。」




言わなきゃ、いけないこと…?





あたし何か悪いことしたかな、と過去の行動を思い返してみる。






「そんな難しい顔しないで。君が悪いわけじゃない。むしろ、悪いのは俺の方だ。」





え…?





「ちょっと卑怯な手を使ったことを謝りたくて、ね。」