【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





「ん、わかってる。ただあたしが、サボりたかっただけ。」




え…。




「だって、楠木の授業かったるいんだもん。屋上、行こっ?」




優輝ちゃんは、無邪気に笑って屋上への階段を登っていった。




いいのかな…。




なんて思っていたその気持ちは、あっという間に飛んでいくことになる。





ギギィ、と重い音をたてて開けられたドア。




隙間から漏れる眩しい光に、思わず目を細めた、その時。





思わず、言葉を失った。









「ほらっ見て!!」






―――あ…、空が。







深くてどこまでも青い空があまりにも近くて、吸い込まれそうだった。




その深く澄みわたる青い青い空の下で、心の底から楽しそうに笑う優輝ちゃん。





「空が綺麗でしょっ??」






うん、本当に…綺麗。




あたしが屋上に来たのは初めてだった。





こんなに空が近いなんて。




いつもよりずっと綺麗に見えるだなんて。




教室の窓から見るのとは全く違うその姿を、あたしは知らなかった。






「あははっ。綺麗すぎてびっくりした?」




うん、すごく。




あたしが頷いたのを見て、優輝ちゃんは目を細めて笑った。