【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





優輝ちゃん、気付いたんだ…。




先生が板書しているのを確認して、そっと振り返る。



あたしの斜め後ろが優輝ちゃんの席だ。





あたしの視線に気付いた優輝ちゃんは、にっこりと微笑んだ。




あたしは、大丈夫だよとゆっくり首を振った。





でも、優輝ちゃんはちっとも安心した顔をしてくれなくて。




どうしたらいいだろうと、考えあぐねていると突然優輝ちゃんは声を張り上げた。




「センセー!」




「おっ、どうした?」




「此花さんが具合悪いそうなので、保健室付き添いまーす。」




えっ!?





「おー?大丈夫かぁ?此花。」





優輝ちゃんは呆然とするあたしの腕を引き、さっさと教室を出た。





どっ、どうしよ…。




あたし具合悪いわけじゃないのに。




はっきりしないから優輝ちゃんに勘違いさせちゃった…っ!!




自由な方の腕で、ぎゅっと優輝ちゃんの腕を引っ張る。




「んっ??」




突然のことにびっくりしたのか、優輝ちゃんの整えられた眉がくいっと上がった。





“具合悪くない”と、とっさに口パクで言うと優輝ちゃんはカラカラと笑った。