「ところで、沙夜?」
「なんデスカ?」
「当然、泊まるところとかは決まっているんだろうね?」
「もちろんデス!ユズのhomeにいくデス!!」
えっ…ええええぇ!?
あたしん家!?
「はぁ…。それはさすがにダメ。柚に迷惑がかかる。」
「えぇー。イヤデス」
「イヤデス、じゃないよ。沙夜は俺のマンションにおいで。」
え…―――?
「わぁっ泊めてくれるデスカ!!大好きデス、アキラ!!」
「はいはい。」
と、泊めちゃうんだ…。
そっか、そうだよね。
恋人同士なんだもんね。
ああ、ヤバい。
なんかもう、泣きそう……。
沙夜ちゃんの意識があたしから暁くんに移っている間にそっと離れ、ケータイの画面を原田さんに見せた。
“ごめんなさい。用事があるので、今日は帰ります。”
「えっ、柚姫ちゃ…」
原田さんに止められる前に、あたしはカバンを掴んでライブハウスを出た。
走って、走って。
息が詰まるのも構わず、家まで走った。
辛い。辛い。苦しい。痛い。
バカだ、あたし。
頭ではわかってたはずだ。
暁くんとあたしじゃ、釣り合わないことくらい。
わかってたはずだ。
あたしの想いは、伝わることはないと。

