いやだ、なんだろうこれ…。
今までに感じたことのないような感情があたしの心を占めた。
黒くて、モヤモヤしたイヤな感情だった。
おまけに、締め付けられるように胸が痛い。
どうしてこんな気持ちになるのか、いまいちよくわからなかった。
制服の上から、心臓のあたりをぎゅっと押さえる。
そんなことをしても胸の痛みがひくわけでも、気持ちが切り替わることもない。
ああ、暁くんの本命は、きっとこの子なんだ。
だってすごくお似合い。
お互いを心から思いあってるような、そんな表情をしてる。
あたしの知らない微笑みを、その子に向けないで…。
「おい、アキ!誰なんだよ、その子!!」
ぼんやりとした頭に、優兄の声が響く。
「誰って…」
…今。一瞬、暁くんと目が合った。
けど、目を合わせてられなくて。
あたしの方から、逸らしてしまった。
「沙夜は…」
少し間が空いて、暁くんはいつものふざけた調子で言った。
「…ヒミツ、かな。」
ヒミツ…って。
なに、それ。

