あき、ら…。
それは、あたしにとって一生忘れることの出来ない名前だった。
アキちゃん…―――。
「―――…っ」
「…柚姫、ちゃん?」
彼…、暁くんに名前を呼ばれ、はっと我に返る。
暁くんは、急に黙り込んだあたしの顔を心配そうに覗きこんでいた。
なんでもない、という意味を込めてちょっと口角を上げて首を左右にふる。
「そう…。ね、柚姫ちゃんってこれから暇?あ、友達と約束あるか…。」
これから…。
一緒に遊ぶ友達なんかいないし、家に帰ってもやることはない。
つまりは、暇だ。
こくり、と頷くと一瞬暁くんはきょとんとした顔をした。
「え…?暇ってこと?」
もう一度頷いて見せると、暁くんは優しく微笑んだ。
「そう。じゃあお昼は食べた?」
今度は左右に首を振る。
「なら、よかったらお昼付き合ってくれない?1人なんだよね」
綺麗に、にっこりと笑った暁くんに引き込まれるようにあたしは頷いていた。

