【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





「ったく、ガキかお前ら!いい加減にしろよ。そろそろ客が入る時間なんだからな。」





原田さんが一生懸命止めるのも聞かず、二人は止まりそうにない勢いで罵倒を浴びせ続けている。





意外。




優兄は京ちゃんとよく喧嘩してたの見てたからそうでもないけど、暁くんが喧嘩してるなんて。




でも、今にも関係が壊れてしまいそうな深刻なものではなくて。




見てて、ちょっと可愛いなって笑えるレベル。





二人はああ見えて、すごく仲いいんだなってわかった。






しょうがない。






あの二人のために、一肌脱ごうか。






今も子供みたいに口喧嘩する優兄の服の裾を、ちょいちょいっと引っ張る。





「そのすまし顔…っん!?」





ちょっと、びっくりさせたみたい。




必死に笑いをこらえて優兄の持つ楽譜を指差せば、二人してきょとんとした顔をした。




“弾くから、貸して”




口パクでそう言ってみれば、優兄の表情は一変。




サァーと血の気が引いたみたいだった。





「ちょ…、お前、マジで言ってる…?」





マジですとも。





コクコクと頷けば、途端に暁くんは笑顔が広がった。