俺の声に、彼女はもう一度振り返る。





そして、バイバイと手を振って今度こそ部屋を後にした。






…ニッコリと、今まで見たことが無いほどに無邪気な笑顔を顔いっぱいに咲かせて。






「柚…」







初めてかもしれない。






彼女のあんな笑顔を見るのは。






普通の女子高生らしい、無邪気な笑顔だった。







「……柚が、笑った…」





そんな声に顔を向けてみれば、優輔までが愕然と柚の消えた扉を見つめていた。





「優輔?」








「…久しぶりに見た。柚があんな風に笑ったのは、三年前が最後だ。」







え…?





「アキ、お前…柚に何した?」





さっきまでの質問と微妙に意味合いが違うことは、なんとなくわかった。






だけど俺の答えは変わらない。




「俺は、何もしてない。」





「…そうか。」






それ以上、優輔は聞いてこなかった。






これ以上聞いても意味がないと思ったのか、それとも――――。








「…お前なら、柚を救ってやれるのかもしれないな。」






「優輔?」







「…教えてやろうか。柚が、声を失った原因。」