もう、どうでもいいじゃないか。




過去のことなんて。






それでも俺は、過去から逃れることは出来ないけど。





今はただ、欲しいだけだ。






俺とは違う、澄んだように濡れた黒い瞳を見つめて口を開いたその時。










ピンポーーーーーーンッ






…は?








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モニターに写し出される顔を見た瞬間、溜め息をつきたくなった。





しつこい程にインターホンを連打していたのは、バンド仲間であり友人の優輔だった。






しかし、なんというタイミング。






もう少し遅くてもいいだろうに。






『おい、柚に何もしてねーだろうな?』






「まだ何もしてないよ。」






その何かをしようとしたところにお前が来たからね。





『おい、なんだその“まだ”って。』






…しつこい。





今度は本当に溜め息をついた。





モニターの向こうでギャンギャン文句を垂れる優輔に、仕返ししてやるか。





しかし、そんなところを柚に見られるのは困る。