幸いにも、手のひらに傷はできていなかった。
話題を変えようと思い、元気になったと言えば彼女は微妙な顔をした。
…どうやら、嘘だとばれているらしい。
俺の体調を気遣ってか、柚姫ちゃんは帰ると言い出した。
自分勝手な話だが、まだここにいてほしかった。
彼女の温もりが離れていってしまうのが、嫌だった。
気が付けば、ここにいてくれ、と彼女の頬に手を添えている自分がいた。
こんなことをしては、離れるときが辛くなる。
そんなことは、頭ではわかっている。
だけど、今はこの子を求めずにはいられない。
俺をこんなにも癒してくれる子を、愛さずにいられるわけがないんだ。
「こっちを見て、柚姫ちゃん…。」
わかっていた。
こうなることは。
「俺、君のこと…」
叔父に逆らってでも
柚が、欲しい。

