「…柚姫ちゃん」




俺の声に、びくりと肩をすくませた柚姫ちゃん。





そして、恐る恐るといった様子で振り返った。






怒られるとでも思っているのだろうか…。





それよりも、俺は気になっていたことを思いきって聞いてみようと思った。





「柚姫ちゃん、ピアノ弾けたの?」






俺の言葉に、今度は大きな目をより一層大きくする彼女。





そうして、おずおずと首を縦に振った。





「すごく上手でびっくりした…。今の、俺が作ってる曲でしょ?」





俺がそう言うと、今度はほんの少しだけ目を伏せる。





頬の、拭い忘れられた涙がキラリと光った。





「…どうしてそんなに泣いているの?」





柚姫ちゃんの頬に手を伸ばして、そっと指で拭ってやれば、驚いた顔で頬を真っ赤に染める柚姫ちゃん。





そんな初々しい反応に、ふつりと沸き上がった感情を静かに押さえ込んで平然としたフリをした。






「何か、悲しいことでも思い出した?」