ああ、くそ…。




ようやく叔父たちから解放され、飛行機で日本へ帰ると





運悪く風邪を引いてしまったらしい。






イギリスの実家にいる間、心が腐敗したように重苦しかった。




おまけに、俺を呼びつけた本当の目的は…。






…考えるのも嫌になる。






こうなってしまっては、彼女と一緒にいることは叶わない。





離れられなくなる前に、距離を置かなくてはいけないな。





柚…、柚姫ちゃんだけでなく、愁生や李織や優輔、オーナーとも。





残された猶予は、大学を卒業するまで。






今は、それまでの自由を楽しむか。





ふぅ、と息を吐き出して小さく笑う。





でも、よかったこともある。





風邪をひいたお陰で、柚姫ちゃんがお見舞いに来てくれた。





俺のためにオーナーが作ってくれたらしいお粥をくれ、ハーブティまで淹れてくれた。





欲を言えば、お粥も柚姫ちゃんの手作りが良かったけど。







そんなことを思いながら目を閉じていると、微かに聞こえ来たのはピアノの音だった。