「…手を見せて。」
暁くんに言われるがまま手を差し出すと、暁くんはそっとあたしの手に触れて、小さく息を吐いた。
「よかった、傷にはなってないみたいだ。」
心配、してくれたんだ…。
あたしの手を見つめ、睫毛を伏せた暁くんの顔はあまりに綺麗で。
微かにあたしの胸は、苦しさを覚えた。
不公平としか思えないほど整った顔で、暁くんは柔らかくあたしに微笑む。
「なんか、体調良くなったよ。柚姫ちゃんが来てくれたお陰かな」
なんて、平気そうな顔で笑っているけど…。
あたしの手を包む彼の手はまだ、熱を帯びていた。
あたしがいたら、暁くんは気を使ってゆっくり眠れないかもしれない。
…帰った方が、いいよね?
“あたし、今日は帰るね”
「えっ?どうして?」
“あたしが居たら、かえって休めないでしょ?”
「そんなことない。…もう少しだけ、居てくれないか?」
「…っ」
真っ直ぐに見つめて、暁くんは掠れた声でそう言った。

