【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐






…あ、や、やば…





勝手に使って、おまけに楽譜も勝手に見ちゃって怒ってるよね…?






しかも、ピアノの音で起こしちゃってるし…。






口パクだけでも謝ろうと、口を開いた時だった。






「…柚姫ちゃん、ピアノ弾けたの?」






え…?





「すごく上手でビックリした…。今の、俺が作ってる曲でしょ?」






予想外の言葉に、謝ることも忘れて頷く。






「一度であんなに弾けるなんて…。それに、どうしてそんなに泣いてるの?」







あ…っ






涙を拭くのも忘れていたらしい。





慌てて目を擦ろうとすると、その前に近づいてきた暁くんの指でそっと拭われる。






「…何か、悲しいことでも思い出した?」





悲しいこと…





確かに、あたしの頭の中にはアキちゃんとの思い出や、辛かった3年間の記憶が呼び覚まされていた。





こくりと頷くと、小さく暁くんが息を呑むのがわかった。