【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐






いつの間に、ここまで遠くに来てしまったんだろう。




ゆっくりと、奏でていた指を止める。





そしてふわりと立ち上がると、ピアノの上に無造作に置かれた 紙に目がいった。





これ…譜面?







題名は、ないみたいだ。





何枚もの紙の、一番上の紙はまだ途中までしか音符が書かれてなかった。






ということはこの曲は暁くんが作ってる…?






…暁くんも、ピアノ弾きながら曲を作るんだ…。





あたしと一緒だ。





今なんてパソコンで曲を作ることも出来るのに。





ホントに何でも出来ちゃうんだなぁ。





そんなことを思いながら、譜面に目を走らせた。





…わっ。





頭の中で奏でられたメロディーは、すごく綺麗だった。






そっと、再び椅子に腰を下ろして指を動かす。






まだメロディーしか書かれていないそれに、なんとなく左手も合わせて弾くともっと綺麗な音になった。