【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐






しばらくして、すぅすぅと規則正しい寝息が聞こえてきた。






…ってか、寝顔可愛いな。







すごく気持ち良さそうに寝ていてほっとした。






ハーブティー効果かもしれない。






暁くんの寝顔に後ろ髪を引かれる思いをしながら、そっと部屋を後にした。







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カチャカチャ…





ふう、こんなもんかな。






洗い終えた食器を眺め、一人頷く。






どうしようかな…。






暁くんは眠っちゃったけど、一応夜に鍋焼うどんをご馳走したくて材料を買ってきてあった。




でも今から作っても、暁くんが起き出す頃には伸びてしまう。




たぶん、しばらくは寝てると思うから。





一旦帰ろうかな、そう思っていた時だ。





ふと広いリビングに視線を向けると、窓際にゆったりと置かれたグランドピアノが目に入った。






…わぁ、綺麗なピアノ。






しかもただのピアノではなく、真っ白いピアノだった。






ほとんど目を奪われたようにフラフラと近寄り、そっと側面を撫でる。





真っ白い表面はひんやりとしていて、キズ一つ付いてない。






白いピアノなんて、生まれて初めて目の当たりにした。





それほどまでに珍しい代物だ。