【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





「柚の、お母さん…?」





“大好きだった。優しくて、温かくて。”





本当に、大好きだった。





あたしに歌を教えてくれたのはお母さん。




あたしが歌を歌うのを誰よりも喜んでくれて、応援してくれたのもお母さんだった。






「一緒だ。」





え…?






「俺の母親もそうだった。ハーブティーをよく淹れてくれたよ、風邪をひいたとき。」







そう言って、暁くんは懐かしそうに目を細めた。







「その味に似てて、なんだか懐かしかったよ。」






そう言う暁くんの表情が、なんだか寂しそうで。




気になって思わず聞いてしまった。






“暁くんのお母さん、どんな人?”






「優しい人だったよ。いつだって笑顔で、得意な料理はハンバーグ。緑色の瞳が綺麗な人だった。」






ふっ、と目を伏せた暁くんは揺れるハーブティーの水面を眺めて薄く笑った。





でも…、どうして過去形なの…?






あたしが疑問に思っていることに気付いたのか、暁くんは悲しそうに微笑んだ。