すると、あたしの隣で黙っていた李織さんがふいにあたしの方へ視線を向けてきた。
何か?という意味を込めて、首をかしげると李織さんはほんの少し口角を上げて3人に視線を戻しながらぼんやりと口を開く。
「レポート、全文英語で提出しなくちゃいけないんだって。」
…なるほど。
それで優兄はあんなに必死なのか。
優兄は、昔から英語が苦手だ。
よく、日本人なんだから日本語さえ話せりゃいいだろ!!って愚痴をこぼしてた。
それはどうやら、大学生の今も継続中らしい。
「アキは、帰国子女だから。英語“は”得意なの。」
なぜか李織さんは、英語はって強調した。
そんな時。
「李織。何か言った?」
遠く離れているにも関わらず、李織さんの声が聞こえたらしい暁くん。
あの笑顔を向けながら、李織さんへと視線を移した。
「何も。」
それに対して、李織さんはふいっ、と顔をそらして誤魔化す。
「…それより優輔でしょ。」
「俺を囮にする気かお前ー!!」

