「どうせ、柚の前でカッコつけたかったってとこだろ。あいつ意外と単純だよな。」
と、優兄が言った時だった。
「誰が単純だって?」
噂していた本人の声がし、全員ギクッと体を強ばらせた。
みんな、そぉっと振り返る。
やっぱりそこには暁くんがいて、あたし達と視線が合うと、にっこりと笑みを浮かべた。
ただその笑顔には、いつもの優しさではなく怒りがひしひしと感じられた。
「優輔。」
「…うん?」
「レポート。もう助けてやらないよ?」
にっこりと笑ってはいるけれど、その意味は脅迫と一緒だった。
そのとたんに、優兄の表情がサァーッと凍る。
「ちょ…ちょっと待って!いやそれはホントに困る…!」
優兄がわたわたと慌てながら必死に弁解する様子を、暁くんはニコニコして見ていた。
暁くん、怖すぎだから…。
ってか、暁くんも怒ったりするんだなぁ。
あたしがそんなことを考えながら傍観していると、見かねた愁生さんがなだめに入っていった。

