【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





『…みんなありがとねー!また見に来てね!』




3曲を演奏し終えたRainは、お客さんの惜しむ声を背にステージを後にした。





改めて回りを見渡すと、明らかに女の子が多い。





Rainはみんなイケメンだから、女の子に人気みたいだ。





優兄や愁生さん、李織さんを呼ぶ声に混じって、アキー!!って暁くんを呼ぶ声が何度も聞こえた。





お客さんだとわかっているのに、心のなかがすごくモヤモヤして、自分が嫌になる。







「…柚!」







そんな時、ずっとステージから聞こえていた彼の声がすぐそばから聞こえて、一瞬で嫌なあたしは飛んでいった。






無意識のうちに顔が勝手に満面の笑顔を浮かべていて、暁くんを迎えた。





「よぉ、アキ。お疲れさん。よかったよ」





「ありがとうございます、オーナー。」





「愁生たちは?」






「裏で盛り上がってます。」





暁くんはそれだけ言うと、くいっとあたしの手を引いて柔らかく微笑む。




「行こう、柚。」