真琴はまだ碌に仕事ももらえないような女優の卵だった。

これまでエキストラと変わりないような役しか回ってこず、テレビにも雑誌にも大きく取り上げられた事はなかった。

黎児が真琴の事を見ても何も気づかなかったのはその為だ。

しかしそんな真琴に転機が訪れる。

もしかしたら、主演のドラマの仕事が回ってくるかもしれないのだ。

役柄は、ちょうど今現在置かれている状況と同じ。

男子校に紛れ込んだ女の子の役。

この仕事は絶対にモノにしたい。

この仕事を足掛かりに、有名になりたい。

そこで真琴のマネージャーは一計を案じた。

役作りの為、真琴を男装させて男子校に転入させたのだ。

「最初はウチかて嫌やってん…男ばっかりの中に一人だけ女のウチが紛れ込むなんて…黎児だって只のネトゲ廃人で萌え好きのキモオタクやと思ってたから…でも…」

上目遣いに黎児を見つめ、真琴ははにかむ。

「よくよく話してみたら、黎児優しいとこもあって…ちょっとええなぁって思ったりしてん…」

(こ、この女…!)

黎児は絶句する。

(今までツンだったのに、デレやがった!しかも結構可愛い!)