と、その時レティシアたちのいる部屋のドアが開いた。


「レックス、ここにいたのか。話が…」


開いたドアから姿を現したのは、アルベルトだった。


アルベルトが見たのは、レックスとレティシアが身体を寄せ合っている場面だった。


踊っていたのだから仕方のないことだが、レティシアはアルベルトの視線に気付いて慌ててレックスから離れた。


リーナは他に仕事があるからと言って、今この部屋には3人だけ。


気まずい空気が流れたが、レックスの明るい声が部屋に響いた。


「兄上、何か用ですか?」


レックスはアルベルトの元へ近付いていった。


だがアルベルトはレックスを見ず、レティシアを見ていた。


夫の視線に気づいたレティシア。


とっさに目を逸らしてしまった。


「兄上?」

「ん、ああ…。」


視線をレックスに移し、アルベルトは話し出す。


レティシアは会話している2人から少し離れて、部屋にあった椅子に座った。


難しい話をしているようで、レティシアは窓から見える景色を眺めていた。


ここから見える景色も海だった。


そんなレティシアを気にしながら、レックスと話しているアルベルト。


「兄上、レティシア様が気になるようですね。」

「…は?」


レティシアに聞こえないような声で、そう言いくすくすとレックスは笑った。


「だってさっきから、ちらちらレティシア様の方を見ていますし…。」

「…見間違えじゃないか。誰があいつのことなんて…。…とにかく、今話したこと分かったな?」

「ええ。舞踏会の日程についてでしょう?それは分かりましたけど…」


言いかけて、レックスは窓の外を眺めるレティシアに視線を向けた。