「分かりました。兄上には何も言わないでおきます。」

「お願いするわ…。」


すると2人の話を聞いていたリーナは


「では、レックス様と練習しては如何でしょう?」


と口にした。


「え…」

「僕は構いませんよ。時間もありますし。」


急な提案にすぐに返事出来なかったが、レックスとリーナは練習をする方向に話を勝手に進めている。


「ではレティシア様、レックス様と練習させて頂きましょう!」


何故かリーナがやる気満々で、レティシアの手を引いた。


「ちょ…リーナ!」


慌てて手を解こうとするが、びくともしない。


結構な馬鹿力だ。


そのままリーナに連れられ、レックスと練習することになってしまった。







王族に生まれた者は、幼い頃から厳しく舞踏の稽古がつけられる。


民の上に立つ王族である為、社交の場での失敗は許されないからだ。


もちろんレティシアも子どもの頃から、舞踏の稽古をつけられていた。


「レティシア様、流石お上手ですね。」


すぐ側で一緒に踊っているレックスは、感心したように言った。


「このくらい当たり前です。」


当然といったようにそう返すと、レックスは安心したように笑った。


「なら、兄上とも大丈夫そうですね!」


そう言って、レックスは足を止めた。


「…どうかしらね。」


レティシアも足を止め、溜め息を漏らす。