「綺麗な薔薇ね。」
レティシアとリーナは城の庭に出て、散歩をしながら美しく咲き誇る薔薇を眺めていた。
舞踏会まであと3日。
アルベルトとも招待状を受け取った時から顔を合わせていない。
こんなことで舞踏会になんて出れるのだろうか…。
「摘んでお部屋に飾りましょうか?」
「そうね。」
リーナが薔薇を摘んでいるのを見ていると、誰かがこちらに近付いてくるのに気付いた。
「こんにちは。レティシア様。」
その声の持ち主は、第二王子のレックスだった。
「あ…こん…にちは…。」
レティシアがぎこちなく挨拶を返すと、レックスはにっこりと笑った。
「どうですか?ここでの暮らしにも慣れたのではないですか?」
「はぁ…まぁ…。」
言われてみれば、ここに来たばかりの頃よりは大分慣れた気がした。
「ここの薔薇は美しいでしょう?」
「えっ?あ、そうね…。」
急に話題が薔薇へと移り、レティシアは慌てて薔薇を見た。
「ここの庭師はきっと優秀なのね。こんなに綺麗に咲かせているんだから。」
「ええ。とても優秀な庭師です。そういえば…この薔薇をここに植えろと命じたのは兄上なんですよ。」
「え…?」
あの男が?とレティシアは目を丸くする。
「まあ…見かけによらずってことですね。」
面白そうに笑うレックス。
アルベルトと薔薇…似合いそうで似合わない。
レティシアも何だか可笑しくなって、つい笑みが零れた。


