「…まだ何も知らない幼かった頃は好きな人と結婚したいなんて思ってたわ。それで結婚式は純白のドレスを着て、ずっとその人と幸せに暮らしたい…。そんなこと夢見てたわ。」

「ふふ、やっぱりそうですか!女の子の夢ですからね!」


だが、その夢はもう叶わない。


現実はもう結婚していて、その相手は敵国の男。


何でこんなことになったのか…。


そもそも自分が王族に生まれてきた時から、夢は叶わないことになっていた。


生まれてきた時から…自分の人生が決まっていたのだ。


「…結局自分には選ぶ権利がないってことね…。」


自国が滅びても滅びなくても…自分に自由なんてなかったんだ…。


「でもやっぱり純白のドレスは着たいですよねー!…アルベルト様に頼んでみます?それにちゃんとした結婚式は行ってませんし、改めて行うのは?」

「…嫌よ。わざわざドレス着るためにあの人に頼むなんて絶対嫌。」


リーナの提案に拒否してそっぽを向くレティシア。


リーナは苦笑いして、再び空になったカップを片付け始めた。


その時ドアがノックされた。


「? どうぞ。」


誰だろうと眉を潜めて返事をするとドアが開かれた。


「なっ…」

「まぁ…アルベルト様!」


何日ぶりか…久々にアルベルトの顔をまともに見た。


黙って部屋に入ってきたアルベルトにレティシアは睨む。


「…何の用?」


するとアルベルトは無言でレティシアに封筒を差し出した。


「?」


訝しげにその封筒を受け取り見てみると、送り主は他国の王からだった。