そういう時はちゃんと答えている。


レティシアには少しでもアルベルトに興味を持ってほしいからだ。


そして叶うのであれば、2人とも仲良くなって、幸せになってほしいかった。


「…レティシア様は、あちらの国にいた頃に将来を誓い合った方はいらっしゃったのですか?」

「え?」


突然のリーナの質問にレティシアは目を丸くした。


「どうしたの、急に…。」

「いえ…ただ気になって。王女でしたから、もう婚約者はいたのかと思いまして。」


リーナは紅茶が入ったカップをレティシアに渡しながら、続けた。


「もしいたら…そのお相手の方は悲しんでいるのではないかと思って…。」

「…そうねぇ…」


レティシアは考える素振りした後、何だか楽しそうに目を細めた。


「じゃあ、リーナの好きな人を教えてくれたら、私も答えるわ。」

「へ?」


今度はリーナが驚く。


「そっ、そんな人いません!」


そう否定するが、怪しい。


レティシアはふーんと、面白そうにリーナを眺めた後、


「…形だけの婚約者ならいたわよ。」


と淡々とリーナの質問に答えた。


「親同士で決めたのよ。相手の方や私の意志に関係なく。その相手の方に会ったのも一度くらい。それだけだし、どんな人なのかもよく分からないまま。好きでもないし、嫌いってわけでもない。きっと婚約者の私が結婚したって聞いても、その方は別に気にしてないでしょうね。」

「そうなんですか…。」

「王族に生まれたら、自分に好きな人がいても、いつまでも一緒にいられることは叶わないのよ。」


レティシアは紅茶を一口飲み、小さく息を吐いた。


ふと…少し昔のことを思い出した。