その頃レティシアは自室でリーナとお茶をしていた。


ここの生活に少しずつだが慣れてきたレティシアはリーナのお陰もあって以前より表情が明るくなっていた。


あの新婚初夜からレティシアはアルベルトと寝室を共にしなかった。


それどころか会話を交わすことすら殆どなかった。


レティシアは別にこのままずっとそれでもいいと思っていた。


リーナとこうしてお茶して楽しく毎日を過ごせればいい…。


「レティシア様、お茶のおかわりどうですか?」


手に持っているカップの中は空っぽで、リーナに言われるまで気付かなかった。


「あ…じゃあお願い。」

「はい!」


カップに茶を注ぎながら、リーナが話しかけてきた。


「今日はよい天気で良かったですね。昨日まで大雨が続いていて、いつ止むかと思ってました。」

「そうね。雨が降ると涼しいけど、やっぱり晴れた方が気持ちいいわ。」


そう言ってレティシアは、窓の外に目を向けた。


海が見えた。


「…ねえ…」

「はい?」

「あの人はどうしてるの?」


今でもやっぱり海を見ると、アルベルトを思い出してしまう。


同じ“青”だから。


「アルベルト様ですか?今日はここから少し離れた町に視察へ出かけてますよ。」

「そう…。なら天気が良くてよかったわね…。」

「そうですね。」


リーナにしてみてば、レティシアが元気になったのはいいが、アルベルトと今のままではダメだと思っていた。


だからと言って無理にレティシアをアルベルトの元に連れて行くことも出来ない。


でもたまに今のようにレティシアは海を見てはアルベルトのことを訊いてくることもあった。