「なぁ、どんな我が儘だって聞く!
頼む!何が嫌なんだ…なぁ…」
こちらは、もう必死であった。

「大丈夫、あたし
卓ちゃんが嫌いになったんじゃ無いの。
好きな人は、勿論卓ちゃんだけよ?
ね?
あたし……卓ちゃんが休んでまで、電話して来てくれて
嬉しかった…

愛してます。

…城山 涼子」

そこで、電話は虚しく切れた。

涙は、出なかった。
だが、涼子が自分に怒ってもいなかった。それだけが、救いだった。

卓は、波打ち際の貝の様に…抜け殻同然に
天井を仰いだ。