駆ける…キミト共に

後ろから、スリッパがパタパタと音を立てて
鞄を手にした涼子が走ってくる。

卓は、鞄を自分で持って行かなかった事の意図を、
理解して欲しかった。

「行って来る。」
鞄を、受け取ると
それだけを言い残して、冷たいノブを
右に回した。

代わりに、涼子から
「ごめんなさい。」
と言われ、反応に戸惑ったが
そのまま駐車場へと向かった。

向かう途中で、城山は気付いた。
「あ…、服に皺が付いてやがる」

その服を手で握り締め、思いに耽りながら、城山は車に乗り込んだ。