駆ける…キミト共に

……だから、体が衝動的に動いていた。

パシーン

よく響いた歌声が、この虚無感を打ち砕いて
波紋を広げて行く。

涼子に手を上げたのは、後にも先にも
この一度きりだった。

「…涼子ぉ、嫌味か?」

隣なんて気にしていられなかった。

ただ、仕事をロクにしていない自分に
労いの言葉なんて
本当に嫌味にしか思え無かった。

「ごめん…なさい」

「涼…子?」
自分の涼子を殴った手をジっと見つめてみる。

手は、怒りに似た
真っ赤な色で、ヒリヒリしていた。

それは二人の心を、静かに描写するかの様に。