愛奈はちゃんと分かっている。恋愛は漫画や小説の
ようにうまくはいかないと。今までそのことを身をもって
体験している。バレンタインの日にいかにも本命のチョコを
贈ったり、軽いスキンシップをしたり、・・・今回のように
健のために料理をつくったり。
幼馴染じゃなかったらよかったなと思うことがあっても
そうじゃなかった姿など愛奈に到底想像できない。

「はぁ、料理・・・頑張ったのになぁ」

ため息をつきたくなるのも仕方のないことだろう。

「それに彼氏ができたらなんてこと言うんだもんな。
お兄ちゃんはそれでいいのかな」

愛奈は今にも泣きそうだ。健に彼女が出来たのを想像して
言葉にできない感情に見舞われたのだろう。

「私は・・・私は嫌だよ。お兄ちゃん」

今日もまた、健に思いをはせながら眠る愛奈がそこにいた。

―将来のお嫁さんが何でダダこねてんだよ。聞き分けの悪い子とは結婚したくないな―

そういってくれた健はとてもかっこよくて、そして愛おしくて
子供なりにもああこれは恋なんだなと理解した時のことを思い返しては
いつもの独り言を愛奈は言う。

「・・・いつになったら貰ってくれるのかな」

段階が数段ぶっ飛んでるような気もするが愛奈は気にすることも
なく眠りにつくのであった。