『ねぇ矢野くん』

「なに?」

『あたし…まだ実感湧かないんだけど……』


だって、さっきまで遠くから見つめてただけだったんだよ。
いきなり告白されるなんて、妄想の世界でしか体験したことなかったのに。



「じゃ、実感湧かせてあげる」




そう言った瞬間、
矢野くんの表情が、急に男らしくなって






あたしに優しいキスをした。





『…!?』

「実感湧いた?」


周りから、女子のキャーッという声や
男子の興奮気味の声が聞こえた。


あまりに驚いて、あたしはただコクコクと頷く。

矢野くんはいたずらに笑って、
「これからよろしくね、葉月」
って言った。



なんだかキャラ違うよ!?



あんなに可愛い矢野くんが、
こんなに男っぽい顔をするなんて。








この後
委員会から戻ってきた理子には
"この短い時間で何があったの"と驚かれた。





そして……

矢野くんファンの女子達に
質問攻めにされたのは言うまでもない。




あたしが困っていたら、矢野くんが助けてくれて……



やっぱりあたしはこれからも、

むさ苦しい男子にも笑顔を振り撒く、
でもあたしにだけ男らしい笑顔をくれる彼に夢中!!







end