会話もなんにもなかった。 ただ、ひたすら楓の大きな手を握った。 足取りがずんっと重くなる。 駅が近づいてきたから。 もう着いてしまう。 ここで楓とは…お別れだ。 本当は片時も離れたくない。 ずっと離さないで隣にいて欲しい。 でも楓は仕事。 あたしは学校だ。 ねぇ、楓。 どこか遠いところに行っちゃおうよ。 あたし、楓がいれば…… どうなってもいいよ? 「陽菜ちゃん」 あたしを覗き込む、困った顔。