声が出ない…… 胸が苦しい……… それくらい嬉しすぎて、 あたしは頷くことしか出来なかった。 「行こうか?」 左手を差し出してくれた楓。 薬指には…指輪。 気づかないフリして、軽く握る。 温かかった。 大きくて… 優しくて…… 手を繋いだまま2人並んで駅まで歩く。 丁度通学ラッシュの時間。 人ごみの中… さっきよりも強く握られた右手。