うつむいた頭が楓の手の重みから、ゆれる。 優しくゆっくり撫でられる。 まるで、泣き止まない子どもをなだめる大人みたいに。 そして…… 手に握らされたのは、 ホテルのマークがついた、メモ帳の紙切れ。 「俺の携帯番号とアドレス」 楓の言葉で… 紙切れから、宝物に変身する。 流れるような綺麗な字。 「会いたくなったら、いつでもおいで」 「ぇ……」 「俺が会いたいだけなんだけど」 思いもしなかった言葉に、戸惑う。 いいの……?