そっと目元に当てると…… お日様みたいないい香りが広がる。 でも、前とは少し違う。 あ、きっとこれは…― 目を閉じると浮かぶ光景。 サナさんが愛おしそうに洗濯を干している様子。 愛する彼を思いながら…。 愛おしい子供を思いながら。 家族の香り。 「楓みたいな優しい人がお父さんだったら、私は嬉しいよ」 「え?」 大きく目を見開きながら私を見つめる楓に訴えるように呟いた。 「だから、そんなこと…言わないでよ」 訴えたわりには、声は少しの音でかき消されてしまいそうになるほど小さい。