「ごめん、もう一回言って」


「だから、アド交換してー♪」


「違う! あ、その前だよ…名前」


「え? あぁ、陽菜ちゃんですけど……」



俺の問いかけに首を傾げながらも、答えた拓郎。



まさか、本当に……

陽菜ちゃん?



地面に転がって砂利の付いた卵焼きをぼーっと見つめる。



携帯にこっそり残っている、

彼女の携帯番号とアドレス。


もう変わってしまっただろうけど、ずっと消すことができなかった。




その卵焼きが、なんだか自分みたいで…

少し笑えた。


誰にでも甘くて、嫌われたくなくて、必死に愛されようと努力する。

でも、旗から見れば俺には価値が無くてどうでもいい存在。



『部長』その肩書きだけが、俺の唯一の救い。