帰宅ラッシュの駅前。

ギターを取り出して、星たちが瞬く空に包まれながら歌を歌う。


暖かい昼間の過ごしやすさも、

日が落ちると少し肌寒い。


駅前の建物のライトが私の白い吐息を照らす。


その光景を見るたびに、私は……

必然かのように楓を思い出す。



かき消すように目を閉じて、無心で歌う。



タ バ コ ふ か し て る あ な た

違 う 人 に 見 え て き た の

な ん だ か 少 し だ け 遠 く に 見 え て


あ な た の 背 中 を

追 う こ と し か 出 来 な い あ た し

Cigarette Choco み た い




――…歌い終わりふっと目を開けると、

胸が張り裂けそうなほど痛んだ。



目線の先には、彼がいた。

会いたくて仕方がなかった彼がいた。