あ、電車もうそろそろ来るか…
急いで支度をする。
紺の制服の内ポケットに音楽プレイヤーを入れて、スイッチON。
聞こえてきた曲は、
私の憧れの人。
大好きな人。
綺麗事を綴らない彼の歌。
癖のある優しい声。
彼の感性がどこか自分と似ているような気がして、
本当に尊敬している。
彼のようになりたい。
彼のようになって……
もう一度、楓に会ってみたい。
偶然を装ってでもいい。
アコギを背負って、よろけながらも駅へと足を向ける。
オレンジとコバルトの絶妙なグラデーションを奏でる空を見つめながら、私は歌を口ずさんだ。