あれから家まで泣いて帰った。



涙が伝った頬が寒さにより冷たくなって、

楓の温もりは一瞬にして儚く消えてしまう。


それが怖くて、嫌で……

マフラーに頬を埋めてみたけれど効果はなかった。



「楓……」



真っ暗な闇が広がる空に、ポツリと消えた彼の名前。


また涙が溢れる。

止まらない、止まるはずない。





無心で歩き続けて、気がつくともう家の前。


カーテンの向こうからは柔らかな暖かい光が漏れていて、

胸がズキリと痛んだ。



私はココに入っていいのかな?

必要とされてるのかな?



寒さからか、怖さからか……

ガクガクと崩れそうな膝に力を入れて、玄関のドアノブを手にした。