「楓……ちょっとしゃがんで」
あたしが呟くと静かに抱きしめる力を緩めてしゃがんでくれた。
遠かった顔が近くなる。
あたしは真っ直ぐ楓の顔を見つめる。
「楓ごめんね、もう会うのやめよ」
「いきなりなんだよ……」
「このままじゃ駄目だよ」
あたしの小さな声が響くと、
楓は黙ったまま俯いてしまった。
伏せられた長いまつげ。
こんなときでも愛おしい、
そう感じてしまうあたしは正真正銘の馬鹿だ。
「楓も分かってるでしょ?」
「………ん」
「楓がいてくれたお陰であたし、変われた」
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