…珍しい事もあるもんだ。


「あー、っと…ごめんなさい。俺、彼女いるから。」

「…そうだよね。」

「でも、ありがと。うん、気持ちは嬉しい…です。」


目の前の女の子は俺がそう言うと、差し出していた綺麗にラッピングされた箱を、自分の胸に引き戻し、ぺこりと頭を下げ走っていった。

その背中を見送っていると、背後から聞き慣れた声が聞こえてきた。


「…チョコもらえなくて残念だったね?」

「っ?いつの間に…別に、いらねぇし。」


突然の声に振り返ると、そこには唇を尖らせた彼女がいた。

拗ねているのが解りやすくて、普段は助かるんだけど、今はどうフォローしたらいいのか解らなかった。


「そ?ならいいんだけど…。」


まだ唇を尖らせたまま、そう言った君は、小さな手で俺の右手を握った。


「何、拗ねてんの?」

「拗ねてないもん。」


その手を握り返しながら言った俺に、唇はますます尖って反論する君。


「ふぅん…」

「何よぉ。」

「や、可愛いなぁと。」

「っ!…んふ。」


俯いた君に、たまにしか言ってあげない言葉をかけると、勢いよく顔を上げ、今度は至極嬉しそうに笑った。

コロコロ変わる君の表情は、全て俺のせい。