「ねえ、早く着替えないと風邪ひいちゃうよ?」

僕は急いで、頭をタオルでがしがしと拭いた。

「あ、タオルありがとう。
 今度洗濯して返すから!
 ねえ、君の名前はなんていうの?」

タオル、泥で結構汚れてしまった。
わざわざ僕にタオルを貸してくれるなんて思わなかった。


「あら、人に尋ねる前に貴方がなのるべきじゃない?
 なーんてね。ふふっ、私は黒川 亜美よ。
 『飼育委員』の渡辺くん?だったかな?」


「え、なんで僕の名前をしってるの・・・。
 いつも名札は付けてないのに」


「あなた、少しだけ有名なのよ?
 4年間も飼育委員ずーっと続けてるって」


彼女は笑顔で話してくる。

いつも遠くからでしか彼女を見ることができなかたのに・・。

今では、こんな近くに彼女がいる・・・。


「ふふっ、あなたってとってもがんばりやさんだよね?
 動物が好きなの?」

「うん、好きだよ。だから、動物の世話ができる
 飼育委員をやっているんだ」

「そうなんだ。あ、早く着替え!しないと!!
 本当に風邪ひくよ?今10月だから・・・」


妙に肌寒いとは思っていたが、今は10月。

寒いのは当然だった。

僕は少し恥ずかしくなって走って教室に向かった。

彼女にこれ以上かっこ悪い所を見せたくなかった。


黒川 亜美ちゃんか・・・・。