「……抱いてねーよ」


聞いた瞬間、安堵で足に力が入らなくなってへなへなと座り込んでしまった。


「あ、美那」


悠もあたしの横にしゃがむ。


「なんだあ~。早く言ってよ……」

「抱いたって言ったらどうした?」

「全身ぶん殴って一生許さなかった」

「こえーよ、美那」


悠が苦笑する。


……ん?


ちょっと待てよ?


「悠は……あたしのどこが好きだったの?」


こんな暴力的には女、普通は嫌いになるよね。


「何?いきなり」

「だって、あたし悠のこと何回殴ったか……」

「反省してるわけ?美那も反省するんだ~」

「い、いいから、どこに惚れたか知りたいの!」


悠がしばらく空を仰ぐ。


まさかない…なんて言わないよね……?


悠が黙ると、不安で嫌なことしか考えられなくなる。


「最初はひとめぼれだったからなあ。顔に惹かれたのかな」

「か、顔……」


あたしもひとめぼれだったけど。


初めて聞いた。


「でも今は」

「え?」


頭の後ろに手が回って、唇が重なった。