「見間違いじゃないの~?美那は時々、いやけっこう見間違い多いから~」


隣でけらけらと笑う沙弥の声が、今はあたしの気持ちを静めてくれる。


「……かもね」

「だいたいね、美那は考えが固いのよ。もうちょっと頭を柔らかくしないと~」


もしかして沙弥、まだバレンタインの酔いから冷めていないのだろうか……。


沙弥は彼氏と今でもラブラブ。


あたしも結局、見に来てしまった。


昨日あんなことを見た後なのに。


あのことを、悠から直接聞きたい一心で。


1人では心細かったから、沙弥を誘った。


沙弥はわかってくれてる。


試合をしている悠の姿は昨日のあれとはまるで別人。


本当に、あれが夢だったんじゃないかって、思う。




試合が終わって、いつも通り悠のそばに駆け寄る。


ただ、悠のそばにいたかっただけ。


「ゆ……」

「悠!」


あたしが話し掛けようとした瞬間、違う声で遮られた。