頭の中で、何度も何度もさっきの声がこだましている。


忘れたい………。


「美那!」


沙弥に肩を叩かれて、我に返った。


「あ……沙弥」

「速いよ、歩くの」

「ごめんごめん」

「ねえ、美那……」


沙弥がじっとあたしの顔を見つめる。


「まだ……気にしてるの?」

「…………」


何も言えなかった。


沙弥はたぶんわかったと思う。


高校に入ってから、ずっと一緒にいてくれたんだから。


「もしかして好きな人ができないのも、それのせいじゃないの?」



痛いところを突かれた。



「ち、違うよ。なかなかいい人が見つからないだけ……」


でも、沙弥に心配かけさせたくなくて、必死に笑顔を作った。


「ならいいけど……」


まだ何か言いたそうな沙弥を残して歩いた。



ごめん、沙弥………。